工場・倉庫の耐震基準と対策方法 | 新旧の耐震基準の違いについてもご紹介
更新日時:2024年8月9日工場・倉庫の耐震診断の必要性について聞いたことはあるものの、耐震診断が必須なのか、耐震改修は何をすればよいかなど、分からないことも多いですよね。そこで目安となるのが耐震基準です。耐震基準は、建物を建てるにあたり、法令で要求される最低限の耐震性があることを証明する基準です。
1981年6月1日より前に建築確認を受けた工場・倉庫は、現在の耐震基準を満たしていない恐れがあるため、耐震診断・耐震改修に努める必要があります。しかし、何から始めていいのかわからない、という不安を感じている方も多いことでしょう。
本記事は、耐震基準と、耐震改修が必要な工場や倉庫の対策方法を解説します。新旧耐震基準の違いや、耐震診断が対象となる要件について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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耐震基準とは?
耐震基準とは、建築物や土木構築物を設計するときに、法令で要求される最低限の耐震性を保っていることを証明する基準です。日本は地震が多いため、建築基準法で定められた耐震基準を満たさなければ、建築物や土木構築物を建設できません。
日本の耐震基準は、多くの人が集まる場所で大規模な地震が発生した場合に備えて、厳しく設定されています。耐震基準をクリアした建物は、最低限の安全性が確保された建物と言えるでしょう。
工場や倉庫がこれまで起こったような規模の地震に耐えられるかどうかを知りたい場合には、最新の耐震基準をクリアしているかどうかをチェックしなければなりません。
その2新耐震基準とは?
新耐震基準とは、1981年6月より施行された耐震基準のことをいいます。
1978年の宮城県沖地震で、建物の倒壊被害が大きかったことを受けています。倒れてきた建物によって亡くなったりケガをしたりした人が多かったため、この地震から教訓を得て、より厳しい耐震基準に引き上げが行われました。
1995年に発生した阪神淡路大震災の被害をもとに、2000年にさらに厳しい耐震基準へと改正が行われましたが、この改正は木造住宅に関するもので、それ以外の建築物の耐震基準は、1981年の改正以降、大きく変わっていません。
その3旧耐震基準と新耐震基準の違いは?
新耐震基準と旧耐震基準の大きな違いは2点です。
- 旧耐震基準:震度5程度の中規模な地震で、ほとんど損傷しないこと
- 新耐震基準:震度6強から7の大規模な地震で倒壊・崩壊しないこと
旧耐震基準 | ||
1923年 関東大震災 | → | 1924年 市街地建築物法改正 |
1948年 福井地震 | → | 1950年 建築基準法制定 |
新耐震基準 | ||
1978年 宮城県沖地震 | → | 1981年 建築基準法改正 |
1995年 阪神・淡路大震災 | → | 1995年 耐震改修促進法制定 2000年 建築基準法改正 |
建築確認日が1981年6月1日以降であれば、新耐震基準による建築です。建築確認日は、建築確認通知書や、建築確認概要書・建築確認台帳記載事項証明などの書類から確認できます。
耐震診断の対象となる建物
ここでは、耐震診断の対象となる工場・倉庫の要件を解説します。
その1阪神・淡路大震災で作られた耐震改修促進法
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)での被害が、1981年以前の旧耐震基準による建物(既存不適格建物)に集中したため、既存不適格建物の耐震補強を促進するために、同年10月に、耐震改修促進法が施行されました。
その後、耐震化促進のための制度強化、耐震化の円滑な促進を図るため、2006年、2013年、2019年に改正が行われました。
耐震改修促進法では、多くの人が集まる建築物(学校、病院、事務所、商業施設など)において、現行の耐震基準に適合しない建築物の所有者は耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うよう努力することが義務付けられました。
その2耐震診断が義務付けられた建築物の要件は?工場にも診断義務はある?
耐震改修促進法では、不特定多数の方が訪れる「要緊急安全確認大規模建築物」と、避難路の沿道等の建築物や都道府県が指定する災害時に公益上必要な「要安全確認計画記載建築物」を対象に耐震診断を義務付けています。
・関連リンク
要緊急安全確認大規模建築物とは:国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001466556.pdf
要安全確認計画記載建築物とは:国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001466557.pdf
不特定多数の者が利用する建築には病院、店舗、旅館等が該当し、災害時に公益上必要な建築物には学校、老人ホーム等が該当します。これらの建物は義務として診断を行わなければなりませんが、工場の場合は法的な義務はありません。
しかし、工場や倉庫は企業の重要な資産であり、多くの場合で企業活動の中核を担っています。地震によって損傷を受けた場合、経済的損失はもちろん、生産・物流の遅延や安全上のリスクが生じる恐れがあります。関連企業や消費者に迷惑がかからないように、事前に対策を講じておく必要があります。
耐震改修が必要な工場や倉庫の対策方法
旧耐震基準で建築された工場や倉庫の耐震性を高めるためには、建物の構造によっていくつかの方法があります。ここでは主に4つの方法をご紹介します。耐震診断の結果により、複数の対策を実施しても差し支えありません。
簡単に導入できるものから、建物の基礎へ手を加えるものまで幅広い選択肢があります。メリット・デメリットを理解したうえで導入しましょう。
その1壁を増やして建物を補強する(鉄筋コンクリート造の場合)
壁を増やすことは、鉄筋コンクリート造の工場・倉庫に対して行える、簡単かつ効果的な補強方法です。耐震性に優れたコンクリートの壁を、施設内にバランスよく配置します。壁を増やすだけで耐震効果が得られる反面、使い勝手が悪い建物になる恐れのある点がデメリットです。
やむを得ない理由により壁を増やせない場合は、建物の外部に控壁(バットレス)を増やすことで、耐震性能を向上させることができます。控壁とは、主壁にあたる部分に対して直角に取り付ける壁です。
控壁でも耐震性が向上するため、敷地に余裕がある場合は、工場内部の使い勝手を優先させてもよいでしょう。
その2既存の柱を補強する(鉄筋コンクリート造の場合)
既存柱の補強も、鉄筋コンクリート造の工場・倉庫に対して行える補強方法のひとつです。既存柱の補強には、3つの方法があります。
- 水平方向に溶接金物または帯筋を巻いてコンクリートを増し打ち
- 水平方向に銅板または帯板を巻いてモルタルまたはコンクリートを充填
- 外側に接着剤を使って炭素繊維を巻きつける
既存の柱を補強すると、建物全体の強度や粘度が向上し、大きな地震が発生しても倒壊しにくい建物を実現します。
その3ブレースを増やす(鉄骨造の場合)
既存の工場・倉庫が鉄骨造の場合は、ブレースを増やす方法が多くとられます。ブレースとは、筋交いのことです。ブレースには、内側から付けるもの、外側から付けるものなど、種類があります。
この工法では、既存建物の柱と梁に囲まれた面へ斜めに鉄骨ブレースを入れて接合します。既存建物と鉄骨ブレースが接合している間にモルタルまたはコンクリートを充填することで、間接的に接合できます。
既存の柱梁と鉄骨枠の間には、無収縮性のモルタルまたはコンクリートを圧入することで、接合が可能です。既存の枠内で斜めにブレースを渡すことで、水平方向の荷重に耐えうる構造が実現できます。
その4免震構造にする
既存の工場・倉庫を免震構造にすることを「免震レトロフィット」といいます。免震レトロフィットは、重要文化財に指定されている歴史的建造物や免振技術がないころの建物に対して採用される工法です。
既存の工場・倉庫を免震構造にするためには、大規模な工事をしなければなりません。建物の周囲を掘り下げて基礎に手を加えたり、建物をジャッキで持ち上げて免震装置を設置したりなどです。
大規模な工事のため、多大なコストがかかります。しかし、免震構造は、地震が建物に伝わりにくいため、より安全性の高い工法です。
センクシアの耐震補強ソリューション
工場や倉庫の耐震基準と、古くなった建物の地震対策について解説しました。耐震基準は、建物を建てるときに法令で求められる最低限の耐震性を証明する基準です。1981年6月1日以降の耐震基準は、新耐震基準と呼ばれ、それ以前が旧耐震基準です。
工場の場合は耐震診断の義務はありませんが、地震によって生産・物流の遅延や安全上のリスクから関連企業や消費者に迷惑がかからないように、事前に対策を講じておく必要があります。しかし耐震改修は、稼働をストップさせることや多くのコストがかかる恐れがあり、着手できずにいるのではないでしょうか。
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